昨年度は、原子層レベルの感度で紫外線照射下における光酸化反応をリアルタイム計測することに成功した。このようなQCM法を用いたナノ界面の反応ダイナミクスの計測例はほとんどなく、新たな界面の研究手法として期待される。しかし、開発したQCMアレイには水溶液中で電気的な干渉をおこすという致命的な欠点があった。生体分子間の相互作用に代表されるように水溶液中は興味深い相互作用が数多く存在する。従って、水溶液中で使用できるQCMアレイの開発が望まれる。 本年度は、まず、水溶液中で電気的な干渉を低減できる新しいデザインのQCMアレイを開発した。開発したQCMは、片面に一対の励振用電極を、他面に対向電極を有する形状であり、その電極形状により一対の厚みすべり振動を発生させることができる。まず、新QCMの動作確認に成功し、その成果をAnalytical Chemistry誌に投稿し受理された。査読者からは、QCMの新しい道を示す成果であると評価された。次に、新QCMで気相中での光触媒反応の計測を行い、10pgの感度で分解反応をリアルタイム計測することに成功した。開発した新QCMにより色素以外の材料め分解挙動の評価や太陽光下での計測などが可能になった。なお、新QCMの検出感度は従来型QCMの恒温槽下における検出感度(数十pg)より優れていた。現在、水溶液中での動作確認にも成功し、バイオセンシングへの応用を行っている。 以上に述べたように、QCMの新しい道を示すことにつながる大きな前進をすることができた。
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