昨年度は、スピンコート法に適した片面から振動励起可能なQCMアレイを考案し、光触媒のゾル膜をスピンコートし、紫外線照射下での光触媒反応をリアルタイムで計測するなど申請課題の目標であるアクティブ環境下での測定が可能であることを実証した。さらに、その環境変動下における最小質量検出能は10pgであり、目標の原子一層分以下程度の検出能を実現することに成功した。このように、環境変動下でありながら、恒温槽による温度制御下での検出能を上回る検出能の実現に成功した。本年度は、まず、上記の実証研究の続きとして色素以外の有機材料薄膜の分解反応を実時間で計測できることを実証した。光触媒膜の熱処理条件に依存した反応速度の違いが明確に測定され、環境変動下における表面反応計測での本法の有効性が確認された。その成果は国際会議に口頭発表として採択され好評を博した。さらに、同一基板に集積化したQCMのアレイについて4度から60度までの温度変動下での水溶液中での抗原抗体反応を計測し、参照子の応答を差し引くことで温度変動の影響を一桁程度に低減できることを示した。また、微細加工なしで上記のQCMを同一基板上にアレイ化する最適配置の条件を見いだし、同一基板上へのQCMアレイの製作が容易になった。これらの成果は実用上重要である。以上に述べたように、最終目標であるアクティブ環境制御下における原子層レベルの界面反応を実時間で計測する技術を実証するとともにその測定に必要なノウハウの獲得に成功した。今後、これらの測定技術がQCMのさらなる多機能化に貢献できると期待される。
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