単層カーボンナノチューブ(SWNT)は優れた電子物性と規則的な一次元ナノ構造を有することから将来の電子材料として大きな期待がもたれている。本研究では、SWNTのサファイア単結晶基板上での水平配向成長について、その配向メカニズムの解明とエピタキシャル的相互作用を通じたSWNTの構造制御を目的として研究を進めてきた。 ラマン分光と近赤外フォトルミネッセンス分光測定により、水平方向に配向成長したSWNTのキャラクタリゼーションを詳細に行い、サファイア結晶面に依存して直径が変化することを見出した。これは、各結晶面の表面エネルギーの違いにより説明できる。カイラリティにも変化が見られ、サファイアr面上ではアームチェア寄りのSWNTからの発光が強く観察されたのに対して、a面ではジグザグ寄りの発光が強く観測された。従来、合成方法によらずアームチェア寄りのSWNTからの発光が強く現れることが知られていることから、今回のa面でのジグザグ寄りの発光は非常に興味深く、今後のカイラリティ制御につながる可能性が期待できるものである。 さらにSWNTの配向成長についても、ストライプ状の触媒パターンから片方向だけに配向成長する「一方向成長」を見出したことから、結晶面との強い相互作用が明らかとなった。また、エレクトロニクス応用において重要であるシリコン基板上での配向成長の可能性を提示することにも成功した。このように本年度は大きな課題であるナノチューブの集積化と構造制御についていくつかの重要な知見を得ることができた。
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