量子光源として、単一の量子ドット内の励起子分子-励起子時系列発光再結合過程に基づく量子もつれ合い光発生の実現が強く望まれている。この場合、励起子分子と励起子遷移に起因する光子対の間の偏光相関が保存されることがもつれ合い光子対実現に向けて重要な要件となる。 当該研究では、まず一励起イベントに対して単一量子ドットからの嘩起子分子・励起子発光遷移過程に基づく一つの光子対が生成していることを、光子相関測定における光子バンチングと呼ばれる状態を確認することにより実証した。また遅延時間零め同時係数ピークの非対称性から、ドット内で励起子分子→励起子遷移の順での時系列的な遷移が起こっていることを実験的に示した。更に、励起子分子・励起子発光それぞれの偏光を選択した光子相関測定を実施し、相対的な直線偏光子配置が平行か垂直かによって、同時係数に大きな差があることを見い出した。この結果から、直線偏光基底の下で励起子分子、励起子遷移により生じた光子対の間に偏光相関があることを確認した。更に定量的な解析を行うため、量子ドット内準位をモデル化して導いたレート方程式による解析を行った。結果、二つの励起子準位の間でのスピン反転時間が、時間分解分光測定により独立に得た励起子発光再結合寿命に対して約4倍程度長いことが結論された。このことから、励起子寿命のタイムスケール内では励起子準位間でのスピン反転は十分遅く、励起子分子・励起子遷移により生じた光子対の間で偏光相関を保持していることが理解された。
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