昨年度までの研究で防災用インライン型ライダーシステムを完成させた。可視光に対する大気放電によるFaraday効果は小さく、伝搬光偏光面回転角は1度以下であることを、数値解析ならびに高電圧放電実験により確認した。この結果から開発するライダーシステムの偏光面回転角計測の分解能は30dB以上が必要になる。本研究では、高出力レーザ用光サーキュレータ、環状光生成のためのアキシコンプリズム対、ならびにゲート付光電子増倍管による作動検出により、偏光消光比30dB以上を確保した。ビーム出射効率もシステム全体で2dB(>80%)を確保するインライン型光学系を完成させた。設計を満足する仕様となった。 製作したライダーシステムは観測方向のスキャニング機構をもつ。これによって大気の時間的な変動のみならず空間的な変動の把握が可能となる。送受信を同一の光学系とするインライン型光学系を採用していることで、装置から30mという近距離からのライダー計測が可能となった。これらのことから天頂方向の低空の雷雲から20km遠方の大気/雲に至るまでを観測範囲をすることができる。 今後開発したライダーシステムを使い、豪雨・落雷予測といった防災を目的とした観測体制を目指す。集中豪雨や落雷を伴う局所的な雲・大気変化においては、まず衝撃波の検出により雲中放電の空間的な位置標定を行う。その上で放電位置に置けるFaraday効果(伝搬光偏光面の回転角)を作動検出で観測し、放電電流、大気電離量の推定を行う。それらの時間/空間変化をみることで対地落雷への予兆因子導出を目指す。
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