研究概要 |
本研究は、発現プロファイルデータに既知の生物学的知見を加えて遺伝子間の因果性を推定する統計的手法を開発し、実際に開発した手法によってこれまで困難であった経時的な遺伝子発現の制御システムの解明を目的としている。平成20年度は、研究目的7,8について主に行った。 第一に、これまでに開発してきた因果性推定手法を遺伝子発現プロファイルデータに適用し、細胞周期の制御システムの解明を行った。具体的には、異なった経時的に変化する細胞間における遺伝子間の制御ネットワークを推定するために、これまでに開発した統計的手法を細胞周期の発現プロファイルデータに適用し、遺伝子発現の因果性を推定した。次に、解析対象とした出芽酵母や大腸菌などモデル生物の既知の知見として、GenBankからのゲノム配列情報、コードタンパク質の生化学的機能に関する情報などを収集し、それらを統合的に扱えるようにデータフォーマットの整備を行った。さらに、整備した既知の発生制御に関する既知の知見と、推定した遺伝子間の因果性との整合性を調べた。最終的には、比較した既知の生物データと推定した因果性の中で、実験的には確認されていないものの生物学的に有り得ると判断された因果性の抽出を行い、これらの因果性の有意性の評価を行った 第二に、新規知見を得るために有用と判断された統計的手法のソフトウェアとウェブツールとして公開した。具体的には、これまでの研究によって、確立した遺伝子発現の因果性推定のための統計的手法をプログラムパッケージとして開発した。さらに、開発したプログラムパッケージを統合的な遺伝子相互作用推定サーバに組み込み、ウェブ上での公開を行った。また、公開したウェブツールについて外国および国内書籍にて広く紹介した。 本研究で開発された統計的手法をウェブ上で公開したことによって、実験研究者による遺伝子間の因果性解析が推進され、生命システムの解明に貢献できたと考える。
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