研究課題
本研究は、代謝反応パスウェイのうち未解明のまま残されている部分、すなわち、薬物や環境因子などの細胞にとって通常外来物質と見られる化合物の代謝反応経路、および、植物の二次代謝産物の生合成経路などについて、代謝反応に関するケミカル情報を的確に表現する手法の開発、それら新しい知識をデータベースとして体系化する作業とデータの計算機的利用法の開発、酵素反応データに基づいた代謝経路の予測法の開発を行うことを目的とする。平成18年度は、KEGG LIGANDデータベースの一部として構築した酵素反応前後における化合物構造の原子変換パターンのデータベースRPAIRに関連して、これらの情報を計算機的に自動抽出するための新規アルゴリズムの開発を行い、RPAIRデータベースそのものの改善を行った。また、これらの結果をKEGGテータベースの一部として公開した。次に、開発したアルゴリズムを用いて、酵素反応における基本的な反応知識ルールを抽出し、これらのルールを代謝パスウェイ全体に渡って統計を取るなどの処理によって、生体内において生物がより好んで用いる酵素反応のセットを見出した。一方、RPAIRデータベースに蓄積された代謝反応ルールを用いて、薬物の生分解経路の予測システムを開発した。このシステムでは、クエリとして与えられた化合物構浩に対してデータベース中の酵系反応ルールのうち適合可能なものを適用し、新たな化合物構造を生成していくため、通常の操作では予測される反応経路は爆発的に増えていくことになる。本研究では、クエリ化合物の全体構造とデータベース中の化合物構造の構造類似性に着目し、一定の類似がないものを省くことによって、この爆発を抑えることに成功した。本手法の有効性については、既知薬物の構造をクエリとして、それら既知の反応経路が予測できるかどうかで検証しており、一定の効果があることを示した。
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Journal of Chemical Information and Modeling 47(in press)
Journal of Pesticide Science 31 (3)
ページ: 273-281