本研究は、代謝反応パスウェイのうち未解明のまま残されている部分、すなわち、薬物や環境因子などの細胞にとって通常外来物質と見られる化合物の代謝反応経路、および、植物の二次代謝産物の生合成経路などについて、代謝反応に関するケミカル情報を的確に表現する手法の開発、それら新しい知識をデータベースとして体系化する作業とデータの計算機的利用法の開発、酵素反応データに基づいた代謝経路の予測法の開発を行うことを目的とする。 平成20年度は、本研究課題で開発した酵素反応メカニズムの抽出アルゴリズムを用いて、酵素反応における原子変換パターンのデータをサーバー上でライブラリ化(データベース化)すること、およびそのデータベースの整備を引き続き行った。また、データベースに登録されたデータのエラー(生化学的な不整合)を修正するにあたって、蓄積されるであろうヒューリスティクスをアルゴリズム自体の改善へフィードバックし、酵素反応メカニズム抽出システムの精度改善を行った。このように導出された反応に関する知識は、連続する酵素反応の反応知識ルールとしても再びライブラリ化することができるので、こちらの情報を解析しパスウェイ予測システムの精度向上へとつなげていくフレームワークを構築した。具体的には、酵素反応ルールとしてライブラリ化した情報を組み合わせることによって、生体内パスウェイを再構成するためのアルゴリズム開発を行った。特に、予測におけるスコア関数について重み付きスコアを導入し、また反応パターンの比較条件を緩和する手法を導入することで、予測のカバー率と予測精度を同時に向上させることに成功した。また、化合物構造を部分構造で表現し、部分構造レベルで構造比較を行う手法について、新規にアルゴリズムの開発を行った。
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