まず『鏨廼花』データベース化へ向け、底本選びを行った。画像と文字情報の精度を考え、初版本の所蔵先を探し、個人所蔵本で正編4冊のデータベース化に協力してもらえることになった。続編については研究費より現物を購入した。借用した正編については一部データベース化へ向けて作業を開始しており、引き続き19年度も継続して行う予定である。 また、『鏨廼花』に所載されている鐔などの刀装具作品調査と並行し、もう一つの基本図書『光村利藻伝』の分析にも着手している。同書には刀装具以外の蒐集履歴や蒐集逸話が紹介されているが、近代絵画の分野でとりわけ篤く庇護していた竹内栖鳳についての調査も行った。利藻が蒐集した栖鳳画の筆頭に挙げられ、大阪で開催された第五回内国勧業博覧会受賞作でもある「羅馬古城図」は長年所在不明であったが、近年広島の宗教団体の所有にかかる事が明らかになっていたが、この作品が昨年特別公開されたため、作品を実見する好機に恵まれた。実見によって、作品を描く手法などについて『光村利藻伝』の記載が正確なものであることを確認するとともに、作品名称についても、示唆的な情報を得ることができた。 一方、明治〜大正期の『日出新聞』(現在の京都新聞)から、明治44年に京都美術倶楽部で光村氏の「現代書画」の売立が行われたことなどがわかったが、目録などの存在は確認できなかった。今後、光村家の所蔵品がどのように売り立てられ、散逸したかについても、可能な限り明らかにしたい。 また、『光村利藻伝』では明治39年として紹介されている須磨での逸話が明治34年の新聞記事に出ていることも判明、『光村利藻伝』の記載年代の精度を考える上で今後参考にすべきであると認識した。
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