研究課題
本年度はセジウィックのホモソーシャリティの概念を手がかりに、19世紀末から20世紀前半のナルシス関連作品を、とりわけ異性愛の排除という観点から読み解いた。ヴァレリーの「ナルシス断章」は、透明で鏡像的な他者関係を歌う一方で、異性愛の汚らわしさを主張しているが、これはセジウィックの言うホモソーシャリティの概念に沿う現象である。従来まったく顧みられることのなかったジョアシャン・ガスケの『ナルシス』(世紀末から20世紀前半にかけて書き継がれた)においても、純粋な他者関係は異性愛と緊張関係にあるものとして描かれている。最後に取り上げたジッドの『偽金作り』においても、ベルナール、オリヴィエ、エドゥアール、パッサヴァンの4人の男性が、とりわけオリヴィエを巡って誘惑合戦を繰り広げるという、ホモソーシャルな関係が描かれている。結局、19世紀末から20世紀にかけてのヨーロッパ社会において、理想的な人間関係は男性同士の友情を規範として構想されたのであり、それはさまざまな個人的差異を捨象し、同質的な鏡像関係(ナルシス関係)に帰着するものだったのである。
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Jean-Louis Le Moigne et Edgar Morin, ed., Intelligence de la complexite. Epistemologie et pragmatique, Editions de I'Aube
ページ: 387-392