本研究では古墳築造南限域である鹿児島において前方後円墳の発掘調査や古墳出土資料の分析を通して新たな国家形成論の基盤構築を目指している。 平成18年度には、これまで前方後円墳を含む古墳群であることが知られていながら、ほとんど研究に耐えうるデータが存在しなかった曽於郡大崎町神領古墳群において、神領10号墳の発掘調査を実施した。調査に当たっては、樹木等の除去作業委託から開始し、地中レーダー探査の実施などを行って、効率的な発掘調査を目指した。その結果、当初の古墳の墳形・墳丘規模の確認という目的以上に、地下式横穴墓3基の新規発見とともに、人物埴輪初現期の武人埴輪を確認するなどの成果を得た。この埴輪の発見は、その希少性から全国紙でも報道されている。 平成18年10月17日から1ヶ月間、橋本が主催し鹿児島大学総合研究博物館では鹿児島古墳出土資料の展示を行ったが、神領10号墳出土資料はひときわ多くの市民の注目を集めた。 また、最南端の前方後円墳を含む古墳群である肝属郡肝付町塚崎古墳群では近年、地元教育委員会によって古墳の確認調査が行われており、多数の遺物が出土しているが、本研究で地元教委に協力しつつ、出土資料の図化・写真撮影などの基礎情報の作成から分析までを進めている。 そのほか、鹿児島県立歴史資料センター黎明館が所蔵する巨大前方後円墳・横瀬古墳採集資料の図化、分析を現在継続中であるほか、鹿屋市教育委員会が調査を行った「薬師堂の古墳」出土資料の調査検討の協力などを行っている。 また、石棺設置台を購入し鹿屋市串良町岡崎18号墳1号地下式横穴墓出土の石棺の復元的な検討作業を通して、構築方法を分析を行った。あわせて、地下式横穴墓の復元モデルを設置することで地下式横穴墓内の空間利用方法と石棺構築法について確認することができた。同時に展示にも活用することができ、その構築方法から発掘調査中以外には見学の困難な地下式横穴墓の構造を追体験できる稀少な資料となった。 今後とも最新の資料の蓄積とその公開を順次目指して行く所存である。
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