本研究では古墳築造南限域である鹿児島において前方後円墳の発掘調査を中心として古墳および出土資料の分析を通して新たな国家形成論の基盤構築を目指している。 平成19年度には、平成18年度に引き続いて鹿児島県曽於郡大崎町神領古墳群において、神領10号墳の発掘調査を実施した。前方後円墳のクビレ部では初期須恵器を中心とする祭祀土器群をほぼ現位置の状態で検出し、古墳祭祀復元の上できわめて良好な資料が得られた。また、その祭祀に用いられた初期須恵器は古墳出土数量としては、全国で2番目の数に達した。この須恵器は愛媛県市場南組窯産須恵器が主体を占めており、地域間交流を考察する上でもきわめて重要な資料となった。 墳頂部では主体部が刳抜式石棺を石室に収めたものであることを確認した。この石棺は延岡〜臼杵付近にその石材産地・製作地が想定され、地域間交流・重量物運搬技術などを考察する上に重要な資料を得た。しかし、主体部の調査は十分ではなく、20年度も継続して行う予定である。 平成19年7月12日から2ケ月間、肝属郡肝付町立歴史民俗資料館で古墳をテーマとする特別展が開催されたが、これは橋本が肝付町教育委員会からの要請を受けて協力し、実施に至ったものである。ここで神領10号墳出土資料はひときわ多くの市民の注目を集めた。 19年度には、鹿屋市串良町に所在する岡崎古墳群に関して情報を整理し研究を進め、研究報告を作成している。今後も最新の資料の蓄積とその公開を順次目指して行く所存である。
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