研究課題
我々のコミュニケーションにおいては、言語以外にも多くのシグナルが重要な機能を果たしている。ジェスチャーや表情とともに、視線もそのひとつである。本研究では、視線が果たすコミュニケーション上の機能に、2つの側面からアプローチしている。ひとつめは個体発生的アプローチ、すなわち、コミュニケーションにおける私選しようが、発達過程においてどのように変化するのかという側面、ふたつめは系統発生的アプローチ、すなわち、視線利用やその基礎となる能力がヒトの進化の過程でどのようにして実装されてきたのかという側面に、並行して着目しながら実証的な研究を進めることを企図している。本年度は、ヒトの乳児の視線を指標とした実証研究の成果を上げるとともに、次年度の実験研究の基礎となる行動観察を重点的におこなった。具体的には、本研究費を基礎に研究代表者が運営する乳幼児実験協カボランティアを対象に、観察をおこなうとともに、比較研究として、北九州市到津の森動物園の協力を得て、チンパンジー乳幼児を複数含む放飼場および人工飼育個体の観察とデータ分析をおこなった。母子がほぼ分離している5歳の個体では、採食競合場面でオトナ個体をチラチラ見ながら様子をおこないながらの採食が頻発するが、母子の分離していない2歳個体ではそのようなことは見られない。母子分離の成立と、Scanningの発達とのクロノロジカルな関係については、今後の観察継続によってあきらかになるだろう。また、Scanningの際に、頭部運動と眼球運動がそれぞれどのように「使い分け」られるのかについても、今年度の観察を基礎に、新規機材を導入することによって分析を可能にし、あきらかにするつもりである。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
The Japanese Journal of Psychonomic Science(基礎心理学研究) 25
ページ: 123-124
Infant Behavior and Development 29
ページ: 584-593
Journal of Ethology, published online, DOI : 10.1007/s10164-006-0018-8,2006. (掲載決定)