研究概要 |
本研究では,1Hz程度の低周波数帯にまで感度を持つ重力波検出器を地球上で建設し,この周波数帯での世界初の観測を行なうことを目標としている.開発される検出器は,超伝導体で浮上された2つのマスの差動回転変動をレーザー干渉計で精密計測するものになる.これよって,ブラックホールの準固有振動からの重力波の検出,もしくは,そのような重力波イベントの頻度に上限値を与える事を目指す. 本研究で開発される検出器は,重力波による変動を受ける試験質量を超伝導体のピンニング効果(ピン止め効果)によって浮上させ,その回転変動を精密計測する,という特徴を持っている.この装置では,マスの回転方向には復元力や摩擦力がほとんどないため,低周波数帯の微小変動まで検出することが可能なのである.また,ピンニング効果を用いているため,マスを安定に浮上させるための制御が不要になり,より安定な観測が可能になっている. 研究初年度となる平成18年度は,超伝導による浮上マスのプロトタイプを製作し,その動作確認と基本測定を行なった.超伝導冷却システムとしては,低振動のパルスチューブ冷凍機を採用し,さらにその振動が超伝導体の振動を引き起こさないように,ヒートリンクを防振するシステムを設計し,製作した.その結果,冷凍機を動作させ,超伝導体を60Kの低温に保った状態でも地面振動より小さい振動レベルを達成することに成功した.また,この超伝導状態に保たれた状態で,どの程度の重量を浮上支持できるかの測定を行い,1kg程度の支持は可能であり,十分な重量を支えられることを確認した.また,この支持系の非対称性(磁気摩擦など)などに起因する機械損失の測定を行い,大気中での測定にも関わらず,真空中で測定された低損失なねじれ振り子とほぼ同等の損失に抑えられていることが確認できた.
|