研究2年目となる今年度は、初年度に第一目標に掲げた、時間反転対称性の破れ探索実験の遂行を目指して、データ収集を始める所までこぎつけることが出来た。本研究の助成期間内に物理の成果をあげる為、偏極した原子核から放出されるベータ線の横方向偏極を検出する実験を、要素開発を終了させてKEK-TRIACにおいてスタートさせた。 具体的には、研究初年度に完成させた、モット散乱を用いた横方向電子偏極度計と合わせて使用される、偏極保持装置を開発から製作まで行った。本実験に対する要請は、小型で低磁場、そして常温で使用できる偏極ストッパーの材料を用意する事であるが、その材料研究を終了させることが出来た。 プラチナ、銅、アルミニウムに対して8Li核の偏極緩和時間を保持磁場依存性の形でベータNMR法を用いて実際に計測した。実験は大阪大学バンデグラフ加速器を用いて行った。結果として、常温でアニールされたプラチナに500ガウス程度の保持磁場を印加する事で3秒以上の緩和時間を確保できることがわかった。この成果に基づき、永久磁石を用いた保持機構を磁場シミュレーションに基づいて製作した。 以上の準備を経て、2008年度は初頭からデータ収集を開始する予定である。具体的には、KEK-TRIACにて傾斜薄膜を用いた偏極リチウム8核実験を行って検出器系及びシミュレーションの最終テストを行う。ここでは物理感度の確認が目的である。所期の性能を確認後、TRIUMFの偏極ビームを用いた最高精度の実験へつなげていく予定である。
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