カーボンナノチューブ電場に対する光学応答変化の測定により、その励起子状態を明らかにすることを目的に研究を行った。 (1) 半導体ナノチューブにおける発光の電場依存性 これまでに半導体ナノチューブに電場を印加すると、明励起子と暗励起子が混成することを電場変調吸収測定から明らかにしてきた。つぎに、電場印加による発光現象の変化を調べた。電場を印加するとスペクトル形状を保ったまま発光強度が減少した。混成により、発光可能な明励起子に、高エネルギー側に位置する発光しない暗励起子が混成することにより、振動子強度が減少し発光強度が減少したと考えられる。従来、カーボンナノチューブにおいて、明励起子の低エネルギー側に暗励起子が存在し、消光していると考えられてきたが今回の結果は暗励起子が消光する役割をしていないことを示唆している。 (2) 金属ナノチューブの電場変調 金属ナノチューブのM11領域(バンド問遷移領域)の電場変調スペクトル(EA)測定を行った。電場変調スペクトルの電場強度依存性を測定した結果、EA信号強度が電場強度の二乗に比例するピークとEA信号強度が飽和傾向を示すピークが一対になって現れた。この一対の信号は励起子状態とバンド状態にそれぞれ帰属される。二つの構造のエネルギー差は約50meV程度であり、金属励起子の束縛エネルギーに対応していると考えられる。金属状態のナノチューブにおいても有限の束縛エネルギー持った励起子が形成されていることを明らかにした。
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