研究概要 |
Ce 4f電子が局在的であり、8K以下で強磁性になるCeRu_2Ge_2の軟X線角度分解光電子分光を高輝度シンクロトロン放射光施設SPrinr8の軟X線ビームラインBL25SUにて20Kの常磁性相で行い、3次元的なバルクフェルミ面を解明した。一方で4f電子を局在したモデルに該当するLaRu_2Ge_2のバンド計算と比較したところ、バンド計算はおおむね実験スペクトルを再現するものの、あるバンドが構成するとされるフェルミ面が本質的に観測されずそのバンドが全て占有されている、あるいは他のバンドが構成するフェルミ面の形状が異なるといった定性的な違いが判明した。このような違いは強磁性相での量子振動測定では見つかっていないため、フェルミ面形状が相転移を境に定性的に変化していると結論づけた。この結果は読売新聞、朝日新聞といった一般の新聞でも取り上げられ反響をよんだ。 常圧低温まで磁気オーダーのないCeRu_2Si_2について軟X線角度分解光電子分光を行い、3次元的なフェルミ面を調べた。その結果、この物質については4f電子を遍歴的に扱ったバンド計算が比較的よく結果を説明するものの、CeRu_2Ge_2と同様に一部定性的に食い違うところも見つかった。しかしこの食い違いはさらに低温で測定した量子振動の結果でも見つかっており、基本的に両方の実験は互いに矛盾なく説明できるものと考えている。 最適ドープに近い高温超伝導体La_<1.84>Sr_<0.16>CuO_4のhν依存軟X線角度分解光電子分光を行い、フェルミ面の3次元性について調べた。現在詳細な解析中であるが、(0,0)-(π,0)方向についてはkz方向、すなわち伝導面に垂直な方向にもフェルミ面は変化し、この物質がわずかではあるが有限の3次元性を持っているのではないかと考えられる。
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