典型的な重い電子系であるCeRu_2Si_2の軟X線角度分解光電子分光を行い、常磁性相20Kにおいてバルク3次元フェルミ面を調べたところ、得られた結果は理論計算の予測とおおむね良く対応するものの、計算で予言されているバンド11によるフェルミ面は観測されなかった。これは実験精度等外因的な要因ではなく、そもそもこのバンドが全て占有され、本質的にフェルミ面を形成しないことが本研究で判明した。また、この結果はドハース・ファンァルフェン効果を利用した量子振動測定の結果とも矛盾しない。また、バルク敏感性の非常に高い硬X線Ce 3d内殻光電子分光をCeRu_2Si_2と参照系でCe 4f電子がより局在的なCeRu_2Ge_2に対して行い、不純物アンダーソン模型を用いた理論解析を行った。Ce 3d内殻光電子スペクトル及びすでに測定しているCe 3d内殻X線吸収スペクトルをそれぞれの物質に対してユニークなパラメータで再現することに成功し、両者の電子状態を定量的に明らかにすることができた。 Ybイオンの価数が2価と3価の中間状態をとる価数揺動物質Yb_1-xLu_xAl_3の温度可変軟X線角度積分光電子分光を行って、得られたスペクトルを不純物アンダーソン模型に基づいた計算で解析を試みた。その結果x=0では同一パラメータでスペクトルの温度変化が説明できず、周期的アンダーソン模型の重要性が明らかになった。混晶系であるx=0.4ではx=0よりも実効的な混成強度が強くなり、一見不純物模型が破綻しうる領域に向かっているにもかかわらず不純物模型でスペクトルの温度変化を説明できだ。これにより、不純物アンダーソン模型の破綻する条件としては、強い混成強度に加えて希土類格子の並進対称性も同様に重要であることが判明した。
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