研究概要 |
典型的な重い電子系で低温まで常磁性を保つCeRu_2Si_2の軟X線角度分解光電子分光を20-200Kの間で温度変化させて行ったところ、この温度スケールをはるかに超える数eVのスケールで電子構造が変化したかのようなスペクトル変化を観測した。この変化が重い電子系形成に伴う電子状態の本質的な温度変化に起因するかどうかを確認するために、4f電子が局在的に振る舞うとされるCeRu_2Ge_2の軟X線角度分解光電子分光も20-200Kの間で温度変化させて行った。その結果CeRu_2Ge_2の電子構造は20-200Kの間で基本的に温度変化せず、両物質ではスペクトルの温度依存性が本質的に異なることが判明した。従来重い電子系物質の電子構造は近藤温度T_Kでスケールされ、高温での電子構造は4f電子が局在モーメント的に振る舞うことから、より局在性の強い物質の低温での電子構造に類似すると提唱されてきた。しかし我々の結果より、CeRu_2Si_2の電子状態はT_Kには全くスケールせず、高温200Kにおける電子構造はCeRu_2Ge_2の低温常磁性電子構造と定性的に異なることが判明した。 層状酸化物Ca_<1.5>Sr_<0.5>RuO_4のフェルミ面は、これまでの我々の軟X線角度分解光電子分光から有限の3次元性を持つことが示唆されたが、それを直接的に検証するために、hν=665,710eV(Tetragonal構造のブリルアン域でそれぞれZ点、Γ点に対応)で高分解能測定を行ったところ、以前の結果と同じく、Z点まわりとΓ点まわりではフェルミ波数の大きさが異なり、少なくとも3つあるフェルミ面のうちの1つが顕著な3次元性を持つ事が分かった。
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