研究概要 |
本年度は、まず、天然体である紅色光合成細菌Rhodobacter sphaeroides 2.4.1の光反応中心(RC)色素蛋白複合体の良質の回折像が得られる結晶の大量調製を試みた。結晶生成の歩留まりが非常に悪いため、大きいゲルろ過カラムを導入することにより蛋白質の大量精製を図り、一回に結晶化を仕込む蛋白質量を増やしたこと、またシッティングドロップ型の結晶育成井戸から結晶をピックアップしてX線回折測定用のループですくい上げ、クライオプロテクション処理を行うという一連の作業技術の向上が図れたことにより、卓上型X線回折測定装置を用いて3.Åを切る分解能が得られる結晶を一度に15〜20個程度調製し、凍結保存することに成功した。また、構造精密化の専門家を1ヶ月間招聰し、X線回折生データの取得から構造精密化までの技術を取得することができた。この際、上記のRC結晶について分解能1.95〜2.1Åという世界最高の分解能のデータを複数得ることに成功した。これらの詳細な解析及びデータの比較により、これまであまり注目されていなかった、蛋白質のふらつきの多い部分、蛋白質表面に存在する水分子、界面活性剤分子、脂質分子の挙動について様々な知見が得られると考えて解析を進めている。また、カロテノイド部位の電子密度は非常に濃いが、数10分の1Å程度の構造変化を議論するためには2.5Åを切る高分解能の結晶を用いる必要があることがわかった。更に、共役二重結合鎖の短い合成カロテノイド3,4,7,8,5',6'-ヘキサヒドロ-7',8'-ジデヒドロスフェロイデン(n8)を再構成したn8RCの結晶を得て分解能3.5ÅのX線回折像を得た。詳細な解析の結果、得られた結晶中にはn8カロテノイドは結合していない可能性が高いことがわかり、カロテノイドの結合を確認する目的でも3.0Å程度の分解能が必要であることがわかった。
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