研究概要 |
TbB4は磁気秩序状態でモーメントがc面内に寝ていると言われていたが,c軸方向の磁化過程が多段ステップを示すなどの異常があり,正確な磁気構造の決定を粉末中性子回折で行った.その結果,やはりモーメントはc面内に寝ており,かつ単位胞内で渦巻き型の構造になっていることがわかった.また,共鳴X線散乱も行ったところ,磁気秩序の発達に伴って,電気四極子も付随して発生することがわかった. DyB4については,11-Boron同位体で作製した単結晶で中性子回折の実験を行い,phase IIでのc面内磁気モーメントの大きさは,共鳴X線散乱で観測された値よりもずっと小さく,10分の1以下であることがわかった.これは,中性子とX線の観測時間の違いによるものであり,X線では秩序化しているように見えるものが,実際は揺らいでいるために,より遅いプローブである中性子では観測されないためである.これにより,phase IIでのc面内モーメントは揺らいでいることが明らかになった.また,より詳細な共鳴X線散乱実験により,共鳴X線で観測しているのは磁気モーメントであることを明らかにした. HoB4については,11-Boron同位体で作製した単結晶を使って,精力的に中性子非弾性散乱の実験を進め,常磁性相(phase I)および長周期磁気秩序相(phase II)において,2つの全く異なる波数の周りに非常にブロードな散漫散乱が同時に成長することを発見した.1つは長周期構造に相当するもので,もう1つは低温相(phase III)に相当するものである.同時に,長周期構造と低温相の構造に相当する弾性散乱ピークも,いわゆるセントラルモードのように散漫散乱の上に成長することも見出した.つまり,HoB4では,長周期磁気秩序と構造相転移を伴う磁気秩序とが競合しており,phase III直上では非常に大きなゆらぎが発生していることがわかった.
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