前年度までに完成したRb原子オーブンおよびスピンフリップゼーマン減速器を用いて、低速(約20m/s)原子ビームを生成し、それを超高真空チャンバー内で磁気光学トラップ(MOT)した。約10秒のロード時間でボース凝縮体生成に十分な約10^10個の原子をMOTに捕獲できた。ゼーマン減速器の最適な設計(オーブンとチャンバーの距離および磁場のプロファイル)により、Rb原子オーブンの駆動温度は他のグループの典型的な駆動温度(110℃から130℃)に比べてかなり低い80℃であり、オーブン側の真空度の向上、引いては超高真空チャンバー側の真空度の向上につながっている。また原子オーブンはリサイクル型であり、真空を破ることなく半永久的にオーブンを駆動することができる。磁気光学トラップされた原子集団に偏光勾配冷却およびスピン偏極を施し、約70%の効率でクローバーリーフ型の磁気トラップ(MT)に移行した。磁気トラップの寿命は約5分であり、これは超高真空チャンバーの真空度が真空計では計測困難な10^-11torr以下であることを示唆している。磁気トラップされた原子集団に約30秒間のrf磁場による蒸発冷却を施すことにより、約10^7個のボース凝縮体を生成した。この凝縮体原子数は、Rb原子では世界最高である。生成したボース凝縮体を波長1064nmのファイバーアンプ光源を用いて光トラップに捕獲した。この凝縮体原子から分子を生成するために、磁場によるフェッシュバッハ共鳴を利用した。フェッシュバッハ共鳴の確認は、分子の生成に伴う原子数の減少を吸収イメージングによって観測することによって行った。実際にフェッシュバッハ共鳴が、既に他のグループによって報告されている1000G付近で観測された。
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