本年度は、本研究課題を遂行するために必要となるボース・アインシュタイン凝縮体生成のための真空チャンバー系および光源システムの開発を行った。真空チャンバーの設計に関しては、多数のレーザービームを入射させる本実験に対応させるために大型のガラスセルを採用した。また、長期の実験における真空度の低下を最小限に抑えるために、可能な限り内容積を抑えたコンパクトな真空チャンバーとした。ルビジウム原子源としてディスペンサーを採用した。ルビジウム原子の取り出しが効率的になり、さらに真空度の長期にわたる保持にも有効である。真空チャンバー構築後、2週間のベーキングを行い、1×10^<-10>Torr以下の真空度を得ることができた。これは本実験を進めて行く上で十分な値である。 一方光源システムに関しては、ルビジウム原子のレーザー冷却を行う際に補助的に使用する、外部共振器型半導体レーザーを製作した。出力120mWの半導体レーザー素子を使用することにより、実験で使用するレーザー周波数領域にて約70mWの出力を得ることができた。このレーザーおよび主光源として使用する出力500mWの半導体レーザーのレーザー周波数安定化のために、ルビジウム原子封入ガラスセルを使った周波数安定化システムを構築し、500kHz以下のレーザー線幅で長時間の安定化を達成した。今後、構築した真空および光源システムを組み合せてルビジウム原子のレーザー冷却を行い、その後ボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)を生成する。さらに光双極子カトラップによるBECの捕獲を行い、光双極子カトラップ中での量子渦の生成およびそのダイナミクスの系統的な研究を進めていく。
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