本年度は前年度に引き続きRb原子のボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)生成のための装置開発を進めていき、レーザーシステムを完成させた。レーザー冷却やBECの観測に必要となる複数のレーザービーム系を構築し、磁気光学トラップ(MOT)が可能な光学系を組み上げた。前年度完成済みの真空システムと組合せ実験を行い、MOTに成功した。レーザーの位置、周波数揺らぎを抑制したことで、非常に安定した磁気光学トラップを行うことができた。ただし、BEC生成に重要な役割をはたす第2MOT中に捕獲できた原子数は目標の1/100程度と少ないものであった。我々の実験ではまず第1MOTにRb原子を捕獲し、これをレーザーで押し出して第2MOTに輸送する。様々な検証および試行の結果、第IMOTからの原子輸送量が非常に少ないという事が判明した。今後、第IMOTの位置をより効率よく原子を輸送できる最適位置に移動し、輸送用レーザーの最適化(焦点距離、強度等)も合わせて行うことで、第2MOT中に捕獲される原子数を10^9個程度に改善する。一方、原子集団をナノケルビン領域に冷却するための原子捕獲容器である磁気トラップの開発を行い、これを完成させた。磁気プローブで磁場分布の測定を行い、BECを生成するに十分な磁場分布および強度を得られていることを確認した。今後、冷却原子集団を磁気トラップに捕獲し、電磁波照射による蒸発冷却を行うことで、BECの生成を達成する。その後光トラップを開発し、磁場反転による位相幾何学的な方法によってBEC中に多重渦度を有する量子渦を生成し、崩壊、もつれ、配列化等の量子渦のダイナミクスを系統的に研究する。
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