研究概要 |
白亜紀の陸域における気候変動と陸域生態系の進化,特に被子植物の進化・拡散とその影響による陸域生態系の変化を復元することを目的として,北海道などの白亜系堆積岩や大型植物化石を対象として古生物学・生物地球化学の研究を進めた。本研究は,古代植物に由来するバイオマーカーと抵抗性高分子に着目して、それらを用いて古生態・古気候記録を解読することが特徴である。研究の進め方として,(1)北海道白亜系の陸城古気候変動の復元と,(2)古代植物のバイオマーカー・抵抗性高分子の分析方法の開発等の基礎研究の2つのアプローチから行なった。 平成19年度の研究成果は以下のとおりである。 1.北海道中央部の大夕張,三笠,苫前地域に分布する地層から堆積岩および植物化石片を採集した。採集層準は,空知層群最上部(Aptian)から蝦夷層群佐久層上部(Turonian)にわたり,それらを試料としてバイオマーカー分析を行った。測定には,本科研費で設置されたガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いた。その結果,Aptian層準から被子植物バイオマーカーを検出した。これは日本では最古の被子植物の記録となる。また,Aptian〜Turonianにおける北海道の被子/裸子植物比などの陸上古植生の変動を復元した。 2.北海道などの白亜紀から古第三紀(北大博物館収蔵)の葉・材化石を用いて,植物化石の抵抗性高分子の基礎研究を行った。化石を加水分解して得られた化学部位(分子ユニット)をGC/MS測定から同定・定量し,その組成分布を調べた。それらの結果から,植物化石の化学分類や化石の保存度の評価などへの適用性について検討した。
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