地球深部物質市を伝播する弾性波速度の圧力・温度依存性を理解することは、全地球的な地震波観測データの比較を通じて地球内部の鉱物学的なモデルに直接的な制約を与えるという意味で非常に重要である。地球深部物質の弾性波速度については、主にマルチアンビル高圧発生装置を用いた超音波測定およびダイヤモンドアンビルセルを用いたブリルアン散乱測定などによって、高圧力下における研究が精力的に行われており、少なくとも上部マントル条件下において非常に精度の良い結果を得るに至っている。しかし、発生圧力の限界や実験的な困難さなどによって、より高い圧力条件における強性波測定はほとんど行われていない。従って、いまだに地球深部、特に下部マントル(圧力刀範囲、約25-135GPa)の鉱物学的モデルに対して、弾性波測定の実験的なアプローチから要請される強い制約を与えるに至っていない。上記した実験的な問題点を克服するために我々はレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いたフリルアン散乱測定技術の開発を行ってきた。その結果、従来まで行われていた単結晶測定に替わり高温高圧のその場での高圧相合成した多結晶体からの弾性波速度を下部マントル最下部条件までの圧力においで測定することに世界で初めて成功した。シリケイトサンプルの測定についても予備的実験をいくつか繰り返し、最適な干渉計料の条件設定とレーザー出力との関係を綿密に調査し、加熱中のブリルアン散乱シグナルの測定にむけて多く改善を試みている。加熱中の試料の黒色化に伴うシグナルの質の悪化が大きな問題であったが、試料や加熱プロセスの見直し等の調整でいくつかの試料については解決することができた。またこの技術開発をさらに発展させ大型放射光施設SPring-8において高温高圧条件下での音速その場測定システムの導入を行い、レーザー加熱光学系の構築および温度測定のためのシステムの開発は予定通りの時間スケールで導入することができた。下部マントルにおける高温高圧力での測定を行うことに成功した。
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