研究概要 |
高強度レーザーを用いて衝撃波を生成し,その強い衝撃波を用いて試料を超高圧に圧縮して地球核条件を生成する実験的研究を行った.試料には地球核の主要構成物質である鉄を用い,1次元流体シミュレーションを用いて,低エントロピー(低温)圧縮条件をもとめた.実験においては,出来る限り低温状態を保ったまま地球中心部(約350GPa)を生成し,この条件下での衝撃波パラメータ(衝撃波速度,粒子速度など)を計測し,さらに音速(弾性波速度)の計測を行った.物質中の音速は,同じ圧力条件下でも液体,固体の場合で違う値をとり,固体の音速は鉄の場合液体より10〜15%速いことがわかっている.これまでの衝撃圧縮実験では,超高圧領域では衝撃波による融解で固体の音速値を得ることは出来なかった.本研究では低温圧縮を行った結果,圧力が300GPa以上の領域における実験値はほぼ固体の音速に近い値であることがわかった.同時に行った温度計測の結果からも,超高圧に圧縮された状態での融点が評価可能であることが明らかになった.衝撃パラメータや音速などのマクロな情報とともに超高圧圧縮下のミクロな情報を得るため,衝撃圧縮時のX線回折計測法を開発し,実験に適用した.まず非圧縮時とやや低圧(20GPa以下)における単結晶鉄の回折パターンを取得し,圧縮条件下でα相からε相への相転移を観測した.また,X線回折と衝撃波パラメータの同時計測テストを行い,問題なくデータが取得出来ることを確認した.
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