研究課題
半導体量子ドットから酸化チタンへの光誘起電子移動反応の効率を定量化するために、まず光照射による量子ドット・酸化チタン膜における光損失率を光学計算並びに実験によって求めた。光学計算の結果、酸化チタン・導電性ガラスの光透過率は、85~90%であることが分かり、酸化チタンを担持せずに導電性ガラスのみで実験により求めた値よりも大きいことが分かった。つまり、これまで実験によって求められた値は、実際に膜に入射している割合よりも過小評価していることが分かり、透過率を厳密に評価するには、光学シミュレーションを利用することが不可欠であることを示した。硫化カドミウム量子ドットを増感剤として、酸化チタンナノ粒子膜に担持した後、多流化物を電解質として湿式の太陽電池を作製した。その結果、量子効率が70%にも達することが分かった。しかも多流化物電解質は、光照射下において、他のレドックス電解質よりも量子ドットを安定化することが分かり、光電流も数十時間維持することが分かった。半導体量子ドットから酸化チタンへの電子移動効率が、量子ドットの種類並びにサイズによってどのような影響を受けるか評価した。増感剤の種類としては、硫化カドミウムと硫化鉛量子ドットを用いた。硫化カドミウムを用いた場合には、電子移動効率は、ドットサイズによらず一定であったが、硫化鉛を用いたときには、ドットサイズの増大に伴い、電子移動効率が減少することが分かった。これは、サイズが小さいときには、量子サイズ効果により硫化鉛の伝導帯下端が、酸化チタンの伝導帯下端よりも負側に位置し、サイズが大きいときには、正側に位置するため、電子移動反応がサイズによって制御されることに起因すると考えられる。
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