研究概要 |
フェムト秒領域での時間分解蛍光スペクトルを観測するため、光カーゲート測定装置の構築に関する研究を行った。励起光源としてパルス幅約70フェムト秒のチタン-サファイアレーザーのオシレーターシステムを用い、その第二高調波(〜30mW,76MHz)を励起光として、基本波(〜700mW,76MHz)をゲート光として用いた。微弱なシグナル光を観測するため検知器には感度の高い窒素冷却型のCCD光検知器を用い、光学遅延と組み合わせた制御系を作成した。集光系には軸外し放物面鏡を用いて時間分解能の向上を図った。カー媒体には非線形感受率が高く応答速度の速いSrTiO_3ガラスについて厚さ0.5mm,0.1mmのものをそれぞれ使用し、カーシグナルの観測を試みた。観測試料には野生種PYPの水溶液を使用した。その結果、カー媒体の参照物としてCS_2を使用した場合にカーシグナルが若干観測されたが、応答速度が遅いために蛍光アップコンバージョンによる計測結果との比較は困難であった。一方SrTiO_3ガラスについては現時点でカーシグナルの観測には至っておらず、これはおそらくゲート光および試料蛍光の集光度に問題があり、これらの集光度を更に上げる必要があると考えられる。また、倒立顕微鏡との組み合わせによるカーゲート計測装置の構築について検討を始めた。顕微鏡の対物レンズとして反射型のものを使用した結果、時間分解能を低下させることなく、軸外し放物面鏡による集光系と比較して蛍光の集光度の向上がみられた。
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