研究概要 |
本研究では、1)集合体の構成要素にレドックスや電荷移動により多様且つ柔軟な微視的電子構造を形成する金属錯体を用いると同時に、2)そのレドックス状態に強く結合した巨視的集積構造を構築し、単一分子で決定されるミクロ分子状態と、分子集団に形成されるマクロ相の結合・相互転写・同期変換を実現することを目的としている。本研究は、課題(A)「モジュール化学の展開とレドックス軸を含むバルク相制御」(平成18-19年度)、課題(B)「電荷注入、外場応答制御に向けた集合体の配向制御」(平成18-19年度)、課題(C)「非熱的相転移型デバイスの構築」(平成19-20年度)から構成される。平成18年度は課題(A)及び(B)を遂行し、課題(C)を実現するための基盤を築いた。具体的には課題(A)においては、レドックス活性配位子とアルキル長鎖を含むモジュール化学を展開し、長鎖に分岐鎖やエステル部位を導入した新規原子価互変異性錯体を、また外圏電子移動活性分子においては、種々の置換基や金属種(Pd,Pt)、配位原子(O,S)を導入した新規錯体を合成し、分子構造と固相、液相、液晶相における集積構造や電気化学的性質の相関を明らかにした。また課題(B)においては結晶、液晶相でのレドックス活性錯体集合体の合理的配列、配向を試みた。その結果、特に外圏電子移動系においては本系が高い自発的ホメオトロピック配向能を有する事が明らかとなった。また直流電場印可下で冷却させることでホモジニアス配向が促進することを発見した。以上の結果は2年度及び最終年度における本研究を遂行する上で大変有用な知見であり、今後の研究展開が大いに期待されると考える。
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