研究概要 |
単一次元鎖磁石における磁化緩和の鎖内相関(相関長効果)を立証するために、単一次元鎖磁石に非磁性ユニットをドーピングし一次元鎖の有限長を任意にコントロールすることにより平均有限長における磁化緩和挙動を系統的にモニターし、磁化緩和現象の変換をとらえることを試みた。[Mn(5-TMAMsalen)M(CN)_6](M^<III>=Fe^<III>,Cr^<III>)のM^<III>をCo^<III>でドーピングした系[Mn(5-TMAMsalen)M_<1x>Co_x(CN)_6]について検討を行い、有限鎖長と磁化緩和との相関を明らかにすることに成功した。これらのドーピングにより、磁化緩和は無限鎖緩和から有限鎖緩和へ変換することが系統的に立証された。 J_1及びJ_2で連結した一次元鎖磁石の磁化緩和は、その両交換相互作用に依存するはずである。[Mn^<III>-Ni^<II>-Mn^<III>]系一次元鎖で、J_2=0の二量化した系を見出した。この化合物の磁化緩和は、完全に二量体として振る舞うΔcF=2|D|S_2か、弱いJ_2で支配されたΔ_<DSF>=8J_2S^2+2|D|S^2のどちらかであることを示した。このような一次元鎖内相関の機構により系統的に磁化緩和現象が立証された例は世界で初めてである。 Mn(III)-TCNQラジカルのフェリ磁性鎖は、数年来研究され、その磁化緩和現象は鎖間の相互作用によるスピン・グラス的挙動であると報告されてきた。しかし、結晶溶媒を含まない安定な一次元鎖[【Mn^<III>(5-TMAMsaltmen)TCNQ](ClO_4)_2を見出し、その磁化緩和現象が単一次元鎖磁石挙動であることを初めて示した。同様な化合物を系統的に設計でき、また、Mn(III)イオンを他の異方性金属に換えることも可能であるため、この系で鎖内相関と磁化緩和現象の系統的な調査を実施できよう。また、鎖内相関の強い単一次元鎖磁石の磁化緩和挙動の定量的取り扱いができる可能性もある。
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