研究概要 |
炭素-ヘテロ原子触媒的付加反応に活性を示すヘテロ原子(X)を探求した。その結果、炭素-硫黄結合の付加反応によりベンゾチオフェン骨格が構築できることを明らかにした(Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,4473にて報告)。すなわち、触媒量の塩化金の存在下、硫黄原子上に転位基を持つオルトアルキニルフェニルスルフィドが25℃で炭素-硫黄結合の付加を伴って環化し、対応する2,3-2置換ベンゾチオフェンが高収率で生成する。転位基としてα-アルコキシアルキル基、アリル基、p-メトキシフェニル基が適応可能である。これまでに触媒的にベンゾチオフェン骨格を合成した研究例はないことから、新しいベンゾチオフェン合成法として期待できる。多置換ベンゾフランはラロキシフェン(骨粗鬆症治療剤)に代表される生理活性物質やジベンゾチオフフェン2の構造を持つフォトクロミック素子として知られていることからこれらの有用化合物の合成への応用が期待できる。この研究過程においてアルコキシメチレンシクロプロパンとイミンとの銀触媒による[2+2]環化付加反応により多置換アゼチジン化合物が高収率で合成されることを明らかにした(Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,5176-5179にて報告)。生理活性物質化合物の部分構造にみられるスピロシクロプロパン環含有βアミノ酸が本反応の生成物から容易に合成できることを報告した。
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