'光応答型人工核酸を用いた高感度遺伝子解析システムの開発に向けて光応答型人工素子の開発を本年度は重点的に行なった。光応答性核酸5-ビニルデオキシウリジン誘導体を5'末端に含むオリゴヌクレオチドは鋳型鎖存在下366nmの光照射で連結相手となる配列の3'末端にあるピリミジン塩基との[2+2]光環化による連結が可能であり、加えて312nmの光照射で開裂するという機能を有している。更に、酵素を用いる場合に要求される至適なpH、塩濃度、温度のような規約条件が存在せず穏やかな条件下で反応が進行するという利点を有する。光応答性核酸誘導体の一つである5-カルボキシビニル-2'-デオキシウリジン(^<CV>U)はDNAやRNAの配列に対して特異的かつ高収率での光連結が可能であるが、二本鎖構造を形成する際は相補鎖例の塩基にアデニンを必要とする制約があった。そこで光連結法を多様な配列に適用する為に5-ビニル-2'-デオキシシチジン(^VC)が開発された。しかしながら、^<CV>Uと比較して90%以上の連結効率を得るには5-6倍の光照射時間(3時間)を要し、更にシトシンとの連結は不可能であった。今回、私は新規光応答性核酸5-カルボキシビニル-2'-デオキシシチジン(^<CV>U)の合成を行い20分間の光照射で連結体オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を97%の収率で得ることに成功し、またシトシンとの連結も可能にした。更に、ミスマッチを含む鋳型鎖を用いて^<CV>Uを含むオリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)が配列特異的な光連結能を有することを明らかにした。またRNAに対して同様の操作が可能であることも見出した。DNAチップ上でRNAを固定化できる事自体画期的な結果であると考えている。
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