光応答型人工核酸を用いた高感度遺伝子解析システムの開発に向けて光応答型人工素子の開発を本年度は重点的に行なった。光応答性核酸5-ビニルデオキシウリジン誘導体を5'末端に含むオリゴヌクレオチドは鋳型鎖存在下366nmの光照射で連結相手となる配列の3'末端にあるピリミジン塩基との[2+2]光環化による連結が可能であり、加えて312nmの光照射で開裂するという機能を有している。更に、酵素を用いる場合に要求される至適なpH、塩濃度、温度のような規約条件が存在せず穏やかな条件下で反応が進行するという利点を有する。光応答性核酸誘導体の一つである5-カルボキシビニル-2'-デオキシウリジン(^<CV>U)はDNAやRNAの配列に対して特異的かつ高収率での光連結が可能であるが、より高速な遺伝子解析に向けた反応性の高い新しい光応答性塩基のデザイン及び合成が望まれていた。そこで、本課題研究により新しい人工核酸塩基をデザインしその過程で光応答性塩基の共役系が大きくなるにつれ光連結の速度が速くなっていることを見いだした。共役系が大きくなることで光連結部位に電子が集まりやすくなったため、光連結が速く進行したと考えられる。置換基の効果はあまり大きなものではなかった。ODN(^<MTV>U)を用いた場合、連結効率が50%に達する時間はODN(^<CV>U)を用いた場合に比べてたった1/4しかかからないことがわかった。秒単位での操作が可能であることを見いだした。今までの「分」単位の操作から「秒」単位の操作へと高速遺伝子解析が可能となった。このODN(^<MTV>U)を用いれば、光連結をもちいたアプリケーションがより有用なものになると考えられる。
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