研究概要 |
研究開始の本年度は,放物線状の屈折率分布を有した円形コアが4列並列に配列されたポリマー並列光導波路の作製に初めて成功した.アクリルポリマーを構成材料とし,プリフォームから熱延伸する手法により並列導波路を作製した.サーバーやルータ等のボード間やバックプレーン光インターコネクションへの応用を目指す上で,この並列導波路には,コアの高密度配列化が求められる.本研究で提案する作製方法は,プリフォームの設計ならびに熱延伸倍率の調整によって,コア径,コア間距離(ピッチ)を自由に設計できる利点を有する.実勢に,コア径:50〜100ミクロン,ピッチ:58〜120ミクロンと,異なる仕様の並列光導波路を複数作製し,その特性評価を行った. 光導波路の伝送損失値は,波長850nmにおいて,0.029db/cmであり,論文などに見られる既存の矩形・均一屈折率コア型ポリマー光導波路の平均伝送損失値,0.1dB/cmに比べて一桁優れた特性を有していることがわかった.また,伝送帯域は,83Gb/smと測定され,同様に既存の導波路にて得られている40Gb/smの2倍の高速伝送性能を有していることがわかった.これらの優れた特性は,コア部の放物線状の屈折率分布に基づくものであることも解析によって明らかにされた.この様に,これまでに国内外にて論文発表されてきたアクリル系ポリマー光導波路に比較して,本導波路は,伝送損失,伝送帯域の面で最も優れていると言える. 高密度コア配列による懸念点は,1つのコアを伝搬する光信号が隣接コアに結合するクロストークである.特に小ピッチ化に伴い,このクロストークの増大が懸念される.しかしながら,本並列光導波路は,コア部の放物線屈折率分布が,光電界をコア中心部に強く閉じこめる効果を有することから,光信号の漏洩が低減され,結果としてクロストークを十分に低く保てることが新たに明らかにされた.
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