本年度は発光型センサーの構築を目指し、まずポルフィリン金属錯体を含む高分子ナノシートの合成を行った。二種類のテトラフェニルポルフィリン白金錯体(PtTPP、PtTDBPP)を用いて、ポルフィリンを側鎖に有する高分子ナノシートp(DDA/PtTPP)とp(DDA/PtTDBPP)を作製した。p(DDA/PtTPP)ナノシートでは膜内のポルフィリンがJ会合体を形成し、発光スペクトルのレッドシフトが観測された。一方、フェニル置換基にそれぞれ2つのtBu基を有するp(DDA/PtTDBPP)の場合はtBu基のかさ高さが立体障害となり、LB膜内でJ会合体の形成を妨げることを見出した。 センシング超薄膜への展開としてジフェニルフェナンスレンルテニウム錯体または白金ポルフィリン錯体の酸素に対する光学的応答に及ぼす銀ナノ粒子の局在プラズモン共鳴の影響を検討した。いずれの色素を用いた場合でも銀ナノ粒子との複合化による発光強度の増加と酸素センシング能の低下を確認した。これは銀ナノ粒子の局在プラズモン共鳴による高効率な色素励起により発光強度が増加する一方で、銀ナノ粒子へのエネルギー移動により励起色素が失活するために酸素センシング能が低下したと考えられる。しかし酸素センシング能の低下にもかかわらず白金ポルフィリン錯体/銀ナノ粒子ハイブリッド集積体ではI_0|I_<100>=22という高い感度を保持しており、発光強度も酸素濃度0%において4.6倍の増加が得られた(図5)。この高い酸素センシング能と発光強度により、発光層の厚みがナノレベルの超薄膜でありながら固体表面の酸素濃度分布を明瞭に示す発光像の取得に成功した。
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