研究課題
複数のシリコン単結晶から構成される粒界構造を規定した複合種結晶を利用して、成長初期の多結晶組織が、成長条件や、種結晶の組織に依存して、結晶成長過程でどのように変化するかを系統的に調べた。高い角度分解能を有するX線回折法を用いて粒界構造の評価を行ったところ、粒界を挟んでロッキングカーブのピーク位置が変化する様子が観測された。これに、結晶成長過程において、微細な粒界構造変化生じ、粒界近傍の結晶方位が変化することを示している。この結晶方位の変化は、転位もしくは歪みに由来すると考えられるが、エッチピット観察により、多数の転位、さらには転位が集合した亜粒界の存在を確認した。さまざまな構造の種結晶に対して同様の評価を行った結果、結晶成長に伴う、粒界構造変化、転位・亜粒界発生の程度と方向は、粒界構造に強く依存していることがわかった。等方的な歪みを結晶外周に加えた際の、粒界近傍の{111}すべり面にはたらくせん断応力の方向と大きさを有限要素法により求め、実験結果と比較したところ、大きなせん断応力が予想される粒界構造において、大きな結晶変形(亜粒界発生)が見られ、両者に明確な相関が確認できた。同様に、すべり面上のせん断応力の方向と、結晶変形の方向にも相関が確認された。したがって、結晶成長過程での亜粒界発生の原因は、粒界近傍に働くせん断応力であるといえる。亜粒界は、微視的に見れば転位の集合体であり、光励起キャリアの再結合中心となる。太陽電池の高効率化に向けては、本研究で得られた知見に基づいて亜粒界発生を抑制可能な結晶成長技術の開発が必要である。
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