新世代ULSIにおける高移動度材料の有力候補の一つであるGeを用いたMOSFETに向けて、低抵抗かつ超平坦界面を有する熱的に安定な金属/Geコンタクト構造の開発を目的として研究を進めている。本年度は、NiGeおよびPtGe_2/Geコンタクトの電気的特性およびNi系コンタクト材料に対するPtやSiなどの第三元素添加による界面物性の制御に関する研究を行った。主な研究成果を以下に記す。 (1)NiGe、PtGe_2および(Ni_1-xPt_x)Ge/Geコンタクトを形成し、その電流-電圧特性、容量-電圧特性を評価した。NiGeおよびPtGe_2/GeコンタクトのSchottky障壁高さは、容量一電圧測定から、それぞれ0.68eVおよび0.66eVと評価された。一方、(Ni_l-xPt_x)Ge/Geの障壁高さは0.45eVとなり、従来報告されているFermiレベルピニングでは説明できない結果が得られた。原因として、コンタクト形成前のGe表面の清浄化条件、界面の原子構造などの影響が考えられる。今後、Fermiレベルピニング現象の解明、制御に向けて、プロセス条件の検証、電気伝導機構の詳細評価解析を進める必要がある。 (2)300℃、30分間の熱処理によって形成した(Ni_1-xPt_x)Ge/GeコンタクトのC-V測定において、空乏層内の不純物イオン濃度の低下が観察された。同条件で作製したNiGeやPtGe_2/Geコンタクトにおいては、このような現象は観察されなかった。局所的なエピタキシャル成長が生じている(Ni_1-xPt_x)Ge/Geコンタクトにおいて、界面歪などの原因で金属原子の異常拡散や欠陥生成が生じている可能性が示唆された。 (3)Ge基板上にSiおよびNiを堆積し、Niシリサイド/Geコンタクトを形成した。この構造はNiGe/Geコンタクトに比較して、高い熱的安定性を示すことが明らかになった。
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