研究概要 |
本研究の目的は, 熱陰極高周波電子銃における唯一にして最大の欠点を独自の新規方式(高周波印加制御電極付き=三極管型)により解決し, もって, 小型経済的, 高機能,高出力なテラヘルツ・赤外領域の新規光源の実現と新たな光科学研究領域の開拓に寄与することにある.そのため, 既設高周波電子銃に設置・内蔵する制御電極付陰極を設計・製作し,この新方式による高輝度電子ビーム生成の大幅な長パルス化の実証することを目指している.そのため,本年度は ; 1. 前年度の粒子シミュレーションを用いた設計に基づき, 熱陰極に代えてCNT陰極を設置した試作機を製作した. 2. この試作機での高周波印加試験を行った結果, 高周波電力の反射により, 印加可能な高周波電圧が制限される問題があることが判明した.また, その原因が, 高周波電力導入部における放電であることをつきとめた. 3. 高周波電力導入立体回路部の設計の見直し, 具体的には, 放電が起こりやすい内導体同士, 外導体同士の接続部を高周波電界に曝さないように, それぞれスリーブを設置することとした. 4. この改良機の製作を完了し, 現在はコンディショニングを進めている. また, この三極管型熱陰極高周波電子銃の運転において必要となる運転制御法について, 既設の従来型の熱陰極高周波電子銃に適用して実験を行った.具体的には,(a)高周波入力制御, 並びに, (b)空胴共振周波数の離調により, 高周波電子銃内の電子ビーム負荷変動による高周波電圧変動を抑制することができる.(a), (b)の両手法のいずれも高周波電圧安定化に有効であること, 並びに, 両手法の併用が可能かつ有効であることが判明した.
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