研究概要 |
非接触非線形超音波法の曲面スキャニングによる損傷画像化を実現するために,本年は,おもに2つの要素技術の開発を行った. 1つは,レーザードップラー振動計をロボットアームに取り付け,材料表面任意点の振動を検出する非接触曲面スキャニング技術の確立である.物体の表面座標とレーザー入射方向ベクトルを与えることで,ロボットアームが最適なレーザーの位置と姿勢を決定し移動したのち,超音波振動を検出するというもので,平板におけるガイド波伝ぱ挙動を測定することで測定が正しく行われていることを確認し,さらに,曲面であるパイプを伝播するガイド波の測定およびその可視化に成功した. 2つ目は,低周波超音波を用いた亀裂部で発生する非線形効果に関する研究である.低周波であるため,非常に変位振幅が大きく,70nm程度の振幅は容易に発生させることができた.反面,亀裂の開閉口を起こさせる応力が小さく,亀裂による高調波の発生は非常に小さいことが分かった.そこで,超音波振動での開閉口力を補う,熱応力を与えることにより,基本波及び高調波の変化をモニターした.熱応力は,局所的に冷却スプレーにより冷却することで,瞬間的な収縮を起こさせることで発生させた. その結果,基本波の測定により熱応力による亀裂の開閉口が確認されたが,高調波の変化は基本波と同様の振幅上昇下降の変化を起こすこともあれば,逆に基本波とは反対の振幅上昇下降の変化を起こすこともあった.これは,亀裂面の接触状態が影響しており,この事象を深く観察すれば,亀裂状態を決定できると考えている.
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