研究概要 |
低周波超音波を用いることにより非接触で構造内の剛性の小さくなっている欠陥部分を検出する非線形超音波法を検討した.低周波振動は,亀裂を開閉口させる応力が小さいため,ここでは,外部から熱を入力することによる熱応力を利用する方法と,音響域の大振幅低周波振動を与える方法を試みた. 熱応力を利用する方法では,熱応力によって亀裂の開閉口していることが,ひずみゲージによる測定や2MHz程度の超音波入射によって確認されたが,非線形超音波には影響が確認できなかった.構造全体の共振によって形成される低周波での振動では,熱による材料の音速変化による共振状態の変化が大きく,熱変化による熱応力と低周波振動を併用することは困難であった. 次に,超磁歪アクチュエーターを用い,音響域の大振幅低周波を加振し,これにより亀裂部の開閉口を起こすことを試みた.このとき,同時に100kHz程度の低周波超音波(基本波)を入力したときの,周波数スペクトルを測定した結果,疲労亀裂を有する試験片においては,基本波ピークのスペクトルの両脇にサイドバンドピークが得られ,亀裂が開閉口している様子が確認できた.つまり,この手法によって亀裂の有無を図る指標として利用できそうである.今後,この現象を配管などの大型実構造物中の亀裂検出に利用できるか検討する.この手法は,構造全体を振動させるため,瞬時に振動する構造内の亀裂が検出できる1次スクリーニング技術として期待できる.
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