研究概要 |
シリコンの疲労特性把握のための疲労試験データの収集を進めるため,以下の3点を実施した.(1)単結晶シリコン試験片の作製,(2)単結晶シリコンの疲労強度・疲労寿命の雰囲気依存性評価,(3)高温薄膜引張試験装置の製作を行った. (1)単結晶シリコン/酸化シリコン薄膜試験片の作製 表面マイクロマシニングを用いて膜厚数ミクロンの薄膜試験片を製作した.試験片形状に加工したシリコン膜をSOIの絶縁層(SiO2)を犠牲層として,フッ酸溶液により,シリコンウエハからリリースし片持ち梁形状とする. (2)単結晶シリコンの疲労特性の測定 既存の雰囲気(温度,湿度)制御可能な静電チャック方式の薄膜引張疲労試験装置を用いて,単結晶シリコンの疲労強度を評価した.応力を変化させたときの疲労寿命(疲労破壊に至るまでの荷重回数)のデータを取得し,セラミックスの亀裂進展理論と脆性材料の強度ばらつき(ワイブル統計)解析を組み合わせることで,強度に大きなばらつきを有し,寸法効果がある,シリコンの疲労試験結果の統計的解析手法を構築し,シリコンの疲労寿命曲線(S-N曲線)を明らかにした. (3)高温引張試験装置の試作 高温(500ないし800℃)かつ酸化雰囲気など雰囲気制御可能な環境で引張試験する装置を開発した.試験片は裏面から赤外線ランプ加熱により所望の温度まで加熱される.加熱系以外の試験装置の構成は従来の薄膜引張試験装置と同じ方法を用いる計画であり,基本的な構成は従来の静電チャック方式の薄膜引張試験装置を利用し,加熱機構,雰囲気制御容器,熱絶縁のための構造などを新たに追加して,新しい装置とした.最高600度での試験を実現し,単結晶シリコンの塑性変形を観察した.
|