ワイドギャップ半導体であるSiCは、禁制帯幅が広く、絶縁破壊電界、飽和電子速度、熱伝導度が高い、等の優れた特性を持つため、パワーデバイス、高周波高出力デバイス等の分野では、SiやGaAsといった既存の半導体に比べ高性能なデバイスが実現できると言われている。近年、SiCの結晶作製技術、基板製造技術、デバイス製造技術は飛躍的に進展してきたが、いずれもまだ十分であるとは言えない。特に、その硬度と熱的・化学的安定性のため、有効な加工方法が模索されている。本研究の目的は、SiCデバイスの製造に関わる加工工程に対して、プラズマCVMや触媒援用化学研磨といった新しい加工技術を用い、SiCの高能率・高精度加工を実現することであり、本年度は下記の項目を実施した。 1.実験装置の整備:本研究においては、主として既存のプラズマCVM基礎実験装置を用いるが、SiCの加工実験を再現性良く行うため、残留水分の管理と、加工中の試料温度の管理が必要である。そのため、既存装置に接続可能なターボ分子ポンプ排気システムを導入し、さらに温度制御機能を有する加熱試料台を導入することで、実験の再現性を確保した。さらに、プラズマに対して直流バイアスを印加できるように、専用のプラズマ発生用電極を準備した。 2.加工速度の面方位依存性:既に4H-Sic(0001)面(Si面)と(000-1)面(C面)においては、加工速度や面粗さが異なる結果が得られることが定性的に分かっているため、基礎実験として、これらの面について、加工特性の温度依存性を調査した。その結果、加工速度に関しては、基板温度が低温の場合にはC面の方がSi面より高速に加工されるが、基板温度が高温の場合には両者の速度は同程度となることが分かった。また加工面粗さに関しては、C面は温度依存性無く良好であり、Si面は高温になると悪化することが分かった。
|