研究概要 |
壁面上の乱流境界層の時空間構造を調べるために,まず,境界層外乱流の壁面ブロック効果がない通常の乱流境界層において,21点I型熱線プローブによる多点瞬間速度と壁面に埋め込んだ圧力センサによる壁面瞬間圧力の同時測定を行った.測定された瞬時データにVITA法および本研究で開発した大規模渦検出アルゴリズムを適用することにより境界層の大規模渦構造と壁面近傍のバースト渦を検知し,それらの構造を明らかにした.その結果,壁面バーストとバルジまたはバレイと呼ばれる境界層の大規模渦構造の間には密接な関連があることがわかった.次に,乱流境界層の外部に格子乱流が存在する場合について風洞を用いた実験を行い,境界層外の格子乱流が壁面近傍の乱流構造に及ぼす影響を明らかにした.その結果,境界層外に存在する格子乱流によって,境界層内の速度変動とレイノルズ応力が著しく減少することがわかった.また,それぞれの輸送方程式に現れる生成項を評価した結果,格子乱流が存在する場合には生成項が著しく減少しており,それが境界層内の速度変動とレイノルズ応力の減少に起因していることがわかった.さらに,下壁面を加熱した場合についても同様の実験を行い,乱流境界層内の熱輸送に及ぼす格子乱流の影響を明らかにした.その結果,速度乱れやレイノルズ応力と同様,壁面からの乱流熱輸送も格子乱流によって著しく減少することが明らかになった.なお,温度成層効果に関しては,壁面乱流境界層の影響のない,一様等方性乱流に近い格子乱流中でのスカラの乱流拡散に及ぼす浮力の影響についても調査した.特に,コスペクトルおよびコヒーレンスのべき乗則に注目し,小スケールの乱流の不変構造が浮力によってどのように変化するのかを明らかにした.
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