研究概要 |
実験で用いた格子乱流場を再現できる三次元直接数値計算(DNS)コードを開発した.格子表面での境界条件を満足させる方法として,ナビエ・ストークス(NS)方程式に外力項を付加して解く方法を用いることで,高精度な解を高効率に得ることができた.対流項と圧力項に対して四次精度の保存型中心差分を,粘性項に対して六次精度のコンパクトスキームを用いることで空間解像度を飛躍的に向上させた.格子乱流と境界層の相互作用に関する計算に関しては,計算領域をドライバー部とテスト部に分割し,ドライバー部で格子乱流を生成した後,発達した格子乱流の任意の流動場をテスト部に流入させるプログラムを作成した.前年度に実施した実験と同じ条件で計算を行った結果,格子乱流によって境界層内の速度乱れやレイノルズ応力が減少することがDNSによっても示された.一様流の乱れに関しては,通常の格子乱流のみならず,O型フラクタル格子,I型フラクタル格子,無せん断混合層,の4種類の外部乱れを生成するプログラムを作成した.これにより,一様流の乱れの強さや種類による壁面乱流境界層の変化を調べることが可能となった.実験においては,風洞内で瞬間速度3成分を同時測定できる小型の熱線プローブを独自開発し,市販プローブによる実験結果との比較を行った.これにより,外乱の影響を受けた乱流境界層内でのレイノルズ応力の全成分を実測することが可能となった.また,液相の実験では水槽入口部に乱流格子を設置し,レーザ蛍光法(LIF)による瞬間濃度測定の予備実験および渦構造の可視化実験を行った.これにより,格子乱流の影響を受けた乱流境界層中での物質拡散実験および渦構造の可視化が可能となった.
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