研究概要 |
本研究では,単層カーボンナノチューブ(SWNT)の初期核生成・成長過程を,第一原理計算,古典分子動力学(MD)法,およびモンテカルロ(MC)法を用いたマルチスケール解析手法を確立することを目的としている.平成18年度は,MD計算により,触媒金属クラスターと炭素との相互作用について系統的に計算を行い,具体的に,鉄,コバルト,ニッケルクラスターと炭素間とのエネルギーを求め,MC法に必要な情報を系統的に抽出した.この結果を,雑誌「Chemical Physics Letter」で発表した. また,海外共同研究者のケンブリッジ大学材料科学科講師Dr.James ElliottがSWNT生成過程のMC計算のコードを作成し,上記で得られた物性情報を用いて,テスト計算をし,コードが正しく動くことまで確認できた.この打ち合わせは,普段はメールを用いて行っているが,平成18年9月にケンブリッジ大学を訪問し,集中的に議論を重ねることで,計画初年度のうちにMC計算部分の骨格を完成することができた. これと平行して,MDレベルでも触媒金属クラスターと炭素原子との相互作用について検討した.具体的に,基板に担持された触媒金属クラスターに関して,基板との相互作用がSWNT生成過程に及ぼす影響について詳細に検討した.これらの結果を,「日本機械学会論文集」及び,「Chemical Physics Letter」で発表した. 上記の研究結果を得るためには,負荷の大きい長時間計算が必要だったが平成18年度に購入・増設した,並列計算機クラスターを有効に活用することにより,当初の予定より進んだ結果を得ることができ,これらの機器の購入が妥当であったと考える.
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