研究概要 |
本研究では,単層カーボンナノチューブ(SWNT)の初期核生成・成長過程を,第一原理計算,古典分子動力学(MD)法,およびモンテカルロ(MC)法を用いたマルチスケール解析手法を確立することを目的としている.平成19年度は,前年度,MD計算により構築した触媒金属クラスターと炭素との相互作用パラメータを用い,メトロポリスモンテカルロ(MMC)法により,単層カーボンナノチューブ生成過程の計算を実行した. MMCプログラムは,海外共同研究者のケンブリッジ大学材料科学科講師Dr. James Elliottのグループが開発したものであり, Dr. Elliottを平成19年7,8月に招へいし,このプログラムを用いた実際のナノチューブ生成過程の計算を実行した.さらに,平成19年9月にケンブリッジ大学を訪問し,これらの経過について集中的に議論した.これらの結果を国際学会「NT07」,「米国物理学会3月大会」で発表し,いずれも高い評価を受けた. これと平行して,触媒金属クラスター自身の相変化についてMD法により検討した.具体的に1.0-7.0nmの鉄クラスターの融点・核生成温度を計算し,これらが触媒半径の逆数に比例して降下することを確認し,これらの結果を,雑誌「Chemical Physics Letter」で発表した.また前年度構築したポテンシャルパラメータを整理し,雑誌「Computational Materials Science」で発表した. 上記の研究結果を得るためには,負荷の大きい長時間計算が必要だったが平成19年度に購入した,並列計算機クラスターを有効に活用することにより,当初の予定より進んだ結果を得ることができ,これらの機器の購入が妥当であったと考える.
|