研究概要 |
平成20年度は, 昨年度までに構築したメトロポリスモンテカルロ法によるカーボンナノチューブ生成過程の計算コードを作成し, ナノチューブ初期核生成後のチューブ構造生成過程について検討した. 具体的には, グラファイト面内変形, 曲げ, グラファイト間相互作用, グラファイト・触媒金属間相互作用, 及び炭素源供給速度等をパラメータとした系統的な計算を行なった. 同じ初期条件からでも, グラファイト・触媒金属相互作用の強弱で, 単層及び二層カーボンナノチューブと生成物が変化することが示唆された. この結果を, 国際学会MRSで発表し, さらに論文The Journal of Chemical Physicsに投稿・掲載し, 国内外に向けて, 当該研究の公表に努めた. ナノチューブ初期核生成後のチューブ(円筒)構造成長過程は, これまでに行なってきた古典分子動力学法によるナノチューブ生成過程検討では, 時空間的に大きすぎて取り扱えなかった問題であり, 上記結果は, 本研究で新たに開発したマルチスケール解析手法によって初めて明らかにされた知見であり, 本研究の重要性が見出せる. また, 海外共同研究者のケンブリッジ大Dr. James Elliott氏とともに, 本マルチスケール手法を触媒クラスターの最適構造の探索ツールへと改良し, 鉄及びモリブデンクラスターの最安定構造を検討する新しい研究を始めており, 本研究結果が新たな, 数値計算研究へ発展するきっかけとなり得たことは, 新しい研究分野を切り開くという観点からも十分意義がある.
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