研究概要 |
平成19年度までに作製したナノ細孔構造(細孔平均径60nm)ビスマステルライド熱電半導体の最終的なZTは最高で0.16であった. 熱伝導率は狙い通り大幅に低減できたものの, 電気伝導度を保つことが難しかったことが原因であった. そこで本年度はナノ細孔構造よりも微細構造同士がよく密着しているナノ結晶に着目, ZTの改善を狙った. 作製したナノ結晶の結晶粒平均サイズが60nmとなるサンプルでZT=0.7となり, バルクのZT=0.6を改善できた. ナノ結晶薄膜では, ナノポーラス構造と同様, 格子熱伝導率の低下が大きかったが, 電気伝導度の大幅な低下を防げたため, トータルとして無次元性能指数ZT(発電効率)を改善できた. さらに熱電発電デバイスに応用しにくい薄膜を利用しても, 微細加工技術を利用した熱電発電デバイスを作製することで十分に発電できることを示した. 一方, 利用しやすいバルクサイズでのナノポーラス熱電素子の作製をナノ粒子を原料として作製を進めた. その結果, みかけの熱伝導率を本来の物性値の1/4にまで低減することができた. これは比熱が1/3に低減していたことでは説明できない熱伝導率低減の結果であり, ナノポーラス構造によって熱伝導率低減できたと考察される. さらに熱伝導率の低温における温度依存性からもフォノンがポーラス構造で強く散乱していると考えられ, 当初の目標を達成した、電気伝導度についても希ガス中でアニールすることで大幅な低減を防げることを確認, 特許出願手続きを進めている.
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