研究課題
化合物半導体への強磁性MnAsナノクラスタのエピタキシャル選択成長技術確立を目的として、本年度はまずGaInAs(111)B面上の結晶成長に関し、成長温度・供給原料ガス分圧比(V/Mn比)・成長時間等の条件依存性を評価し、通常のプレーナ表面上でのナノクラスタ形成制御の観点から詳細なデータ取得を行った。GaInAs(111)B面上に形成されるMnAsナノクラスタのサイズ・密度制御を目的に、結晶成長条件依存性を詳細に調査した結果、V/Mn比が1125の条件下で、直径100nm前後の非常にサイズの揃ったナノクラスタが高密度に形成され、断面格子像観察から、ナノクラスタ上面・下地GaInAs層表面・MnAsとGaInAsの界面も原子レベルで極めて平坦・急峻であると判明した。さらに電子線回折から、こうしてサイズ・密度制御したナノクラスタにおいても、ナノクラスタのc軸がGaInAs層の[111]B方向と平行であることも明らかとなり、成長条件によらずGaInAs(111)B面上では結晶軸の揃ったナノクラスタの形成が可能であった。また本年度はさらに、GaAs(111)B面を用い、基板上に三角格子状のSiO_2周期パターンマスクを電子線リソグラフィにより形成した後、基板開口部にのみMnAsナノクラスタを形成する、いわゆる選択成長技術に関する研究を実施した。結晶成長条件依存性評価の結果、Ga・In原子に比べMn原子はSiO_2誘電体膜上に堆積しやすく、通常の結晶成長条件下ではマスク開口部への選択的結晶成長は困難であった。鍵となる結晶成長条件はやはり成長温度・V/Mn比であり、850℃・1125の時、周期2μm・直径250nmのMnAsナノクラスタをマスク開口部にのみ選択的に形成することに世界で初めて成功した。明瞭なファセット面により構成された六角形ナノクラスタが形成された。
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